里地里山の保全

最終更新日 2023年11月27日

情報発信元 農政課

~外来生物情報~越前市内で外来ドジョウが確認されました。

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市西部地域のドジョウの遺伝子解析の結果から外来ドジョウの侵入が確認されました。(平成26年10月)

この度、福井県立大学及び城西大学との連携により調査を進めてきた、市西部地域に生息するドジョウの遺伝子解析から、外来ドジョウの侵入が確認されました。

自然再生活動等において、ドジョウの増養殖に取組む際は、注意していただきますようお願い申し上げます。

天王川及び吉野瀬川 に生息するドジョウの遺伝子解析について

これまでのコウノトリ飛来状況から判断し、コウノトリの野外定着には、餌となるドジョウが生息する水田、ビオトープなどの環境整備が重要であると考えられます。

しかし現在、ドジョウの生息環境は、乾田化や3面張り水路などの整備により悪化しており、市内の生息地も少なくなっています。

そこで、越前市ではコウノトリの餌生物となるドジョウが生息できる環境を整備する為、休耕田を活用したドジョウの増養殖事業に取り組みました。

またドジョウは、平成25年2月に改定された、環境省の絶滅の恐れのある生きものをまとめたレッドリスト(汽水・淡水魚類)において

  • 日本各地で放流や飼育施設等から逃げ出したと思われる国外産のドジョウ(遺伝的に国内のものと異なる)や外来種であるカラドジョウが見つかっており、交雑や種間競争等による影響が懸念されている。
  • 一部地域では国外産のドジョウとの交雑による遺伝子汚染が実際に確認されているが、全国的な拡散状況は十分に把握されておらず、評価に必要な情報が足りない。

という理由から、新たに情報不足(DD)と選定されるなど、希少種ではないものの保全の必要性が高まっています。

スライド1

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スライド2

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越前市のドジョウ増養殖事業では、これらドジョウの置かれている現状を考慮し、古来から日本に生息する在来ドジョウを増殖させる目的で、大学と連携し遺伝子解析を行い、外来ドジョウの侵入の有無や地域集団の遺伝的多様性を調査しています。

外来ドジョウのうち代表的なカラドジョウ(外来生物法により要注意外来生物に選定)は、ドジョウとは別の種類である為、大きな個体であればひげの長さ、尾びれの暗色班が無い、などの外見的特徴により見分けることができます。

(注)カラドジョウとドジョウの見分け方についてはこちら
出典:大阪府立環境農林水産総合研究所

一方、中国や韓国から輸入された普通のドジョウは、日本のドジョウと同じ種類である為、外見からはほとんど見分けがつきません。

このようなときに、有効な方法として用いられるのが遺伝子解析です。

生物の設計図である遺伝子は、同じ種類であっても、長い進化史の中で地域によって少しづつ違いが生まれてきます。

その違いを読み解くことで、生きものの類縁関係や地域ごとの遺伝的なグループを調べることができます。

ドジョウも例外ではなく、中国や韓国といった大陸のドジョウと日本のドジョウは異なった遺伝子のグループを形成しています。

また、最近の研究では日本国内においてもいくつかの遺伝的グループが存在していることがわかっています。

このような地域ごとの遺伝的な違いは、1,000万年以上の長い歴史を持つ日本列島の形成過程と共につくり上げられてきたものです。

しかし、人間による影響で外来ドジョウが侵入してしまうと、交雑によってそれまで存在しなかった遺伝子が日本のドジョウへ入り込んでしまいます。

すると、長い進化の過程でつくられてきた地域固有の遺伝的グループが一瞬にして壊れてしまいます。

このような問題は近年、メダカやホタルなどいくつかの生き物で引き起こされています。

ドジョウは水産資源として重要である為、養殖や輸入による人為的な移動が以前から行われており、市内でも養殖事業等により地域外のドジョウが持ち込まれた記録が存在します。

したがって、遺伝子解析を行って市内のドジョウについて遺伝的類縁関係と外来ドジョウの侵入について明らかにすることは、越前市のドジョウ増養殖事業に非常に重要な取組みとなります。

今回の調査では、越前西部地域を源流域とする、天王川水系、糠川水系、吉瀬川水系の8箇所の生息地から採集されたドジョウについて、107個体を解析しました。

スライド4にドジョウの採集場所を示します。採集場所の括弧内の数字は、解析を行ったドジョウの個体数です。

スライド3

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スライド4

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その結果、解析を行った107個体のドジョウのうち1個体はカラドジョウであることがわかりました(スライド5)。

この個体は、吉瀬川下流域の生息地Aで確認されたもので、採取時稚魚であったため、外見からの判別ができませんでした。

また、最近の研究でカラドジョウは、在来ドジョウと交雑することがわかっており、雑種の可能性も否定できません。

それ以外の106個体のドジョウからは、23タイプの遺伝子配列が認められました。

これらの配列の類縁関係を調べると3つの遺伝的グループの存在が明らかとなりました(スライド5)。

これらの遺伝子配列をさらに調査すると、中国やヨーロッパといった大陸由来のドジョウに近縁な配列が確認されました(スライド5、グループ1及びグループ3)。

外来系ドジョウの分布を調べると、大陸系のドジョウは天王川水系に多く生息していることがわかりました(スライド6)。

スライド5

スライド5

スライド6

スライド6

遺伝子解析の結果から、天王川水系及び吉野瀬水系(下流域)には何らかの理由により、外来系統のドジョウが侵入し定着しているものと判断されます。

したがって、今後外来ドジョウの分布拡散が生じないよう注意が必要です。

カラドジョウ、外来ドジョウと在来ドジョウとの、交雑の状況なども調べる必要があります。

一方、糠川水系と吉瀬川水系上流域は、外来系統の侵入していない生息地であると考えられます。

したがって、越前市の増養殖事業では、親ドジョウとしてこれらの生息地から採集したものを用いることが望ましいと考えられます。

しかしながら、これは市西部地域のみの結果であり、越前市全域にあてはまるものではありません。

現在、市西部地域を含めた市全域のドジョウの遺伝子解析を大学との協働で進めており、今後他地域の解析結果もふまえながら外来系統の拡散を防ぎ、ドジョウの生息環境につて保全再生を検討していかなくてはなりません。

ドジョウの増養殖に関わられている方々には、外来ドジョウの侵入に十分ご注意頂きますようよろしくお願い申し上げます。

尚、白山地区で福井県が行うコウノトリの飼育繁殖試験には、中国産ドジョウが用いられていますが生態系に配慮し、全て死亡したものを与えています。

したがって、今回の調査結果には直接関係ないと考えられます。

外来ドジョウを拡げないためには

  • 水系間をまたぐ、または同じ水系であっても離れた生息地のドジョウは絶対に放流しない。
  • 国産ドジョウでも購入してきたものは絶対に放流しない(国内でも遺伝的グループが異なるので国内移入となります)。
  • ペットとして飼っていたドジョウは絶対野外に放さない。
  • なるべく放流に頼らず、ドジョウの生息環境を保全再生する。

以上のことは、メダカ、ホタルなど様々な生きものの保全再生に言えることです。

外来生物は、一度侵入してしまうと完全に駆除することは、極めて困難で取り返しがつきません。

特にドジョウのような、小さな水辺の生き物では外来生物や同種内の外来系統を駆除するのはほぼ不可能です。

自然再生活動を行う場合は、外来生物や同じ種類でも他地域の系統を絶対に侵入させないように十分ご注意ください。

調査結果の詳細について

今回の調査結果の詳細については、学術雑誌に掲載されております。

掲載雑誌:DNA多型Vol.22 No.1 (2014)

タイトル: 「福井県越前市西部地域に生息するドジョウの遺伝的特性」

著者:日和佳政、新井文八、藤長裕平、鈴木克欣、田原大輔、石黒直哉

この度、福井県立大学及び城西大学との連携により調査を進めてきた、市西部地域に生息するドジョウの遺伝子解析から、外来ドジョウの侵入が確認されました。

自然再生活動等において、ドジョウの増養殖に取組む際は、注意していただきますようお願い申し上げます。

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情報発信元 環境農林部 農政課

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