里地里山の保全

最終更新日 2023年11月27日

情報発信元 農政課

新たな技術を使ったアベサンショウウオの調査活動【前編】

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新たな技術(環境DNA)を用いてアベサンショウウオの調査を実施しています。【前編】

越前市西部地域は、環境省のレッドリストで最も絶滅の危機に瀕しているとされる1A類に分類されている、アベサンショウウオの分布域内最大の生息地です。

アベサンショウウオは、種の保存法という法律により、捕獲、採集、飼育、生息地の破壊が禁止されていて、これに違反すると懲役や罰金などが科せられます。

非常に希少なアベサンショウウオですが、越前市西部地域では地域住民の皆さんが主体となり保全活動や生息状況の調査が行われています。

保全活動やモニタリング活動の詳細は、【第2回】 希少野生生物の保全活動研修 ~西部地区のアベサンショウウオ編~ (平成26年12月) で紹介しましたが

今回は、環境DNAという新たな技術を用いたモニタリングが始まったので紹介します。

保全・調査活動の現状と今後

活動実績

図1 平成21年から30年までの越前市西部地域における希少野生生物の保全・モニタリング活動の実績

越前市西部地域には、200カ所以上のアベサンショウウオの生息地が存在します。これらの多数の生息地を調査することは現実的には不可能です。そこで、毎年40箇所程度の生息地に絞って20名から30名ほどの 地元の方々が手分けをして活動を続けています(図1)。

生息地の水流確保等の保全活動(写真1)、幼生の生息状況を目視確認する調査活動(写真2)が、80回から100回程度行われてきました(図1)。

しかし、活動が始まって10年以上が経過し、活動する地域の方も高齢になったことから、今後の調査活動には、労力を軽減し少人数で出来るだけ多くの生息地を調査できる新たな方法の導入が求められていました。

また、アベサンショウウオは種の保存法で捕獲が禁止されている為、網などを使った捕獲調査は国から許可された人でなければできません。

したがって、調査活動は目視で生息地を壊さないよう慎重に行われます。

しかし、目視調査では幼生が泥に潜ったり、落ち葉などの下に隠れたりしている為、簡単に見つけることができません。

このようなことから、調査精度の向上も今後の活動に求められた課題でした。

保全活動

写真1 保全活動の様子

目視調査

写真2 目視調査の様子

環境DNAとは?

越前市西部地域で地域住民の方が行うアベサンショウウオの調査活動の課題を解決するため、越前市では城西大学 理学部化学科 環境生命化学研究室との共同研究により近年、様々な生物調査に導入され始めている環境DNA分析をアベサンショウウオの調査に導入できないか検討を進めてきました。

環境DNA

アベサンショウウオをはじめとする水生生物は、水中で粘液、表皮などの組織片そして糞などを出しており、その中にはDNA(遺伝子)が含まれています。

DNAは、細胞の中にある生き物の設計図で、A(アデニン)、T(チミン),G(グアニン),C(シトシン)の4つの物質が様々なパターンで並んでいます。

その並びのパターンには、その生き物を特徴づける他の生き物には存在しない、独特の並び方(配列)を持っている場所があります。

この独特の並び方を持つ場所、(ここではアベサンショウウオだけが持っているDNAの並び方)を化学的に検出することで、その環境に生息する生物の有無を調査する技術が環境DNA分析です。

この方法では、調査方法が生息地の水を500ミリリットルから1リットル程度採水するだけで、DNAの抽出や検出は協力していただいている城西大学で行う為、調査をする地元の方々の手間も省け時間もかかりません。

また、水の中に溶けたDNAを検出するため、目視調査や捕獲調査で確認されなくても、どこかにアベサンショウウオがいればDNAが検出されます。

したがって調査時の見落としなどの人為的エラーが軽減できるため、調査精度の向上に大きく役立ちます。

アベサンショウウオを検出するための準備 (DNAマーカーの製作)

環境DNA分析では、アベサンショウウオにしかないDAN配列を探すところから始まります。

様々な生き物のDNA配列が登録されている国際データベースから、アベサンショウウオを含めた20種類のサンショウウオのDNA配列を探し、ある特定の遺伝子の同じ部分のDNAの並びを比較します。

ここでは、ミトコンドリアの12S領域という場所を比較しました(図2)。

図2の一番上に四角で囲ってある部分が、他のどのサンショウウオにも同じ配列が無い、アベサンショウウオ独特の配列です。

Result of Assemble

この2つのアベサンショウウオに独特の配列をターゲットにして、四角で囲まれた部分に挟まれた、合計147個のDNA配列を化学的に合成することでアベサンショウウオを検出します。

この後、2つのターゲット配列を使って、アベサンショウウオだけを検出できるかどうかなどいくつかのテストを実施した後、いよいよ生息地から採水した水を使ってアベサンショウウオの調査開始です。

次回は、環境DNA分析を用いたアベサンショウウオの調査の様子を紹介します。

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情報発信元 環境農林部 農政課

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