最終更新日 2023年11月27日
希少野生生物の保全活動 ~西部地域のアベサンショウウオ編~
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越前市西部地域での希少野生生物保全活動
西部地域(坂口・白山地区)では地域住民の方が主体となり、環境省レッドリストで最も絶滅リスクの高い、絶滅危惧1A類に分類されているアベサンショウウオの保全活動が行われています。
保全研修会の開催
越前市では、市西部地域で希少野生生物の保全活動を行う、水辺と生き物を守る農家と市民の会と協力し、毎年アベサンショウウオの効果的な保全手法を学ぶため、専門家を招いた希少野生生物保全研修会を開催しています。
特に、ここ数年は、アベサンショウウオの生息地は、イノシシなどの動物により破壊される被害が深刻になっており、保全研修会と合わせて獣害対策研修会を重点的に開催しています。
研修会では、保全活動を行う地域住民の方を対象に、講師の専門家の方からアベサンショウウオの産卵場所整備と獣害対策の方法について学びます。
生息地保全活動
地域住民の方が行う保全活動では、アベサンショウウオが産卵しやすい水溜りを手作業または重機を用いて造成することが主な作業です。
アベサンショウウオは、止水性のサンショウウオなので水の流れている場所を好みません。
山から流れてくる沢水が、水溜りになるように溝を掘り、周囲に畦を作り、間伐した枝を水溜りに投入し、隠れ場所を作ります。
また、生息地の獣害による破壊が深刻であるため、ワイヤーメッシュを用いた生息地の囲い込みが進められています。
モニタリング活動
このような西部地域でのアベサンショウウオの保全活動は、地域住民の方 が担当する集落を決めて、産卵場所作りや卵や幼生のモニタリングが毎年行われています。
また、繁殖期が冬場であるため、卵や幼生のモニタリング作業は、雨や雪の降る中でも行われており大変な作業です。
このように、本市西部地域の森の中に棲む小さな希少種アベサンショウウオは、地域住民の方によって大切に守られています。
毎年、40から50カ所ほどの生息地で十数名から20名ほどの地域の方が活動を行い、延べ回数にして80から100回程度の活動が行われています。
表 地域住民によるアベサンショウウオの保全活動実績 (平成24年から平成29年まで)
年 度 |
平成24年 |
平成25年 |
平成26年 |
平成27年 | 平成28年 | 平成29年 |
活動人数 |
13名 |
16名 |
28名 |
20名 |
18名 | 20名 |
活動延べ回数 |
78回 |
93回 |
100回 |
91回 |
78回 | 80回 |
保全活動 |
41地点 |
50地点 |
47地点 |
56地点 |
54地点 | 44地点 |
生息確認 |
13地点 |
23地点 |
16地点 |
27地点 |
34地点 | 17地点 |
アベサンショウウオとは
アベサンショウウオ(学名:Hynobius abei)は、石川県から兵庫県但馬地方までの日本海側に分布するサンショウウオです(写真1)。
本種は、主に人里近くの森や林といった里山に生息しています。
写真1 アベサンショウウオの成体 (写真 長谷川巌氏提供)
豊かな里山が残されている本市西部地域は、アベサンショウウオの分布域のなかで最も多くの産卵場所が確認されている地域です(図1)。
図1 アベサンショウウオの産卵地の割合(長谷川巌 氏提供)
アベサンショウウオは、森や林の湿った落ち葉の下などに棲んでいて、小さな無脊椎動物(昆虫、クモやミミズなど)を餌にしています。
繁殖期は11月から12月下旬で、この時期になると森から山際の棚田に接する小さな水路や、湧き水のある水溜り(写真2)に移動し産卵します。
写真2 アベサンショウウオの産卵場所の例 (山際の水路と湿地)
水中に産み落とされた卵は、ゼリー状の卵のうといわれる膜につつまれており、その中に数十から100個くらいの卵が入っています。
卵からかえった幼生は、2月中旬から水中で成長・発育し、7月初めから8月下旬までに変態(えら呼吸から肺呼吸に切り換わる)して上陸します。
上陸した個体は、森の中で単独で生活し、2年から3年で繁殖できるようになります。
しかし近年、農林業の衰退による里地里山の環境悪化、埋め立てなどの開発そしてイノシシなどの獣害により、生息地の破壊や消滅が進んでいる地域があり、環境省レッドリストで最も絶滅の危機に瀕している、絶滅危惧1A類に分類されています。
また、種の保存法に指定されているサンショウウオで、採集、捕獲そして生息地の破壊が法律で禁止されています。