最終更新日 2023年11月27日
水路の自然再生のススメ
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水路や小川の自然をどう取り戻す?
かつては淡水魚をはじめ、たくさんの水辺の生きものが生息していた小さな河川や水路が、昭和40年頃から始まった圃場整備の影響によって、環境が変化し生きものが棲みにくくなってしまいました。
生きものの棲みやすい水辺を取り戻すため、市内で取組まれている多自然型の水路や小川の実例を紹介します。
その1 ~ 流れや水深への配慮 ~
ここは、北日野地区にあるコンクリート3面張りの排水路です(写真1)。
一見、両岸がコンクリート護岸された直線的な水路ですが、この水路の壁面には所々に設けられたくぼみがあります(写真2)。
このくぼみを詳しく見ると、木材でつくられた杭の後ろに石が詰められています(写真3)。
写真3 側壁にあるくぼみ内部の様子
このように、流れの一部を窪ませることで、水が滞留し生きものが引っかかったり隠れたりできる場所になります。
これは昔の水路で言う「ウロ」を人工的に作ったものです。
・ウロ: 水路や河川の護岸が水流などによって削られ、空洞ができている場所のことを言います。このような場所は魚などの隠れ場所となります。
写真4 堰上げ水路の設置例 (都辺町)
また、渇水時に水量が少ない水路には、ところどころに堰板や土嚢を設けて水路の水深を上げることで流れを緩やかにし、魚が棲めるようにする堰上げ水路が取り組まれています(写真4)。
その2 ~段差への配慮~
これは、吉野地区にある水路です(写真5)。
写真 5 吉野地区にある水路の様子
この水路と小さな水路の合流点にスロープが設けられています(写真6)。
通常このようなコンクリート水路の合流部は、垂直な段差になっています。
この合流部をスロープにし、ところどころに石を配置することで水の流れが緩やかになり、生きものの移動を助けます。
また、水路の途中にある段差にもこのようなスロープが設けられています(写真7)。
白山地区や坂口地区の天王川や吉野瀬川の段差には、生きものの移動に効果の高い魚道が作られています(写真8)。
写真8 生きものの移動に効果の高い天王川の段差に設置された魚道
また今立地区の横住川には、下流から上流まで様々なタイプの魚道が設置されています(写真9,10)。
このような、水路や小川の段差を解消することで、下流域と上流域の間で生きものの移動が可能になり、魚類をはじめ多くの生きものが戻ってくる可能性を高められます。
多自然型水路のポイント
圃場整備などによって、コンクリートで固められ直線的になってしまった水路や小川でも、少し手を加えることで生きものが戻ってくる可能性を十分高められます
このような、水路の自然再生を実施するポイントとして、
1 堰板などで水深を確保し、ウロ、ワンド(注)など水の滞留する場所をつくる。
2 植石スロープや魚道により流域の連続性を確保する。
3 治水機能に影響が出ないよう流路や流量を妨げない。
4 一部区間だけでなく河川の本川、支川、水路と流域全体で取り組む。
が挙げられます。
(注)ワンド: 水路や河川の本流とつながっている小さな「入り江」や「川の淀み」「淵」、水が増えたときにつながってしまう池のようになっている場所。
4の流域全体というのは、あくまで理想論ですので、ひとまず対象地にする水路に、魚などの生きものがある程度生息していれば、できるところから実施するという方法で十分効果が期待できます。
また、予算的には堰上げ水路のように、低予算で地域活動などを利用すれば簡単に設置できるものもあります。
しかし、中には魚道や人工ウロなどのように設置に費用のかかる設備もあります。
大規模に行う場合は、水路の改修に合わせ地元土地改良区などと協議の上、実施するとよいでしょう。
まとめ
魚類をはじめ淡水域に生息する生きものは、種類や成長段階によって上流域から下流域までの様々な環境を利用します。
アユやウナギ、モクズガニ、テナガエビなど、種類によっては海と川を行き来しているものもいます。
多自然型の水路や小川が広がり、水辺の連続性と生きものの生息場所を確保することで、淡水域での生きもの同士のつながりが豊かになります。
淡水域の生きもの同士のつながりを豊かになすことは、私たちの食卓に並ぶウナギ、アユ、サケ、ドジョウなど内水面漁業資源の復活につながります(写真11) 。
また、子どもたちが安全に遊べる生き物がたくさん生息する水路や小川をつくることで、地域の自然に手軽に触れ合い学ぶ場をつくることも期待できます(写真12)。
水路や小川の自然再生に興味のある地域や団体の皆様は、是非ご協力願います!!